恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


もりもりと朝食を平らげていると、先に食べ終わった一成が洗面所へ。

戻ってきた彼は、いつもの無愛想な日下部長だった。

ああ、前髪……下ろしたままがよかったな。まあ、私しか見られない姿だと思えばそれもまた良しか。


「一緒に出社するわけにはいかないから、お前は少し先に出ていけ」


そうだよね。さすがに、おてて繋いで出社は無理だよね。


「じゃあ、また……会社で」


この部屋を出たら、本当に魔法が解けてしまいそう。

バッグを持ってしょんぼりと玄関を出て行こうとすると、呼び止められた。


「姫」


姫って、私だよね?

靴を履いてふと振り返ると、間近に一成の顔が。


「仕事中は今まで通りで頼む。仕事が終わったら、また連絡するから」


そう言って優しく肩を抱きよせると、音を立てずにそっと軽く、唇を合わせた。


「いってらっしゃい」


にっと笑って見送られ、部屋の外に出る。

ドアの外に出た途端、腰から砕けそうになった。

やややややばい。普段が無愛想なぶん、ギャップがすごすぎる。

歩き出すと、ふと強い風が吹いた。

はらはらと、目の前にピンクの花びらが舞って踊る。


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