恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
のんびりとした時間はいつもよりゆっくり流れていくような気がした。
少し沈黙が落ちるときもあったけど、別段苦にはならない。
同じ空間で同じ時間と空気を感じている。それだけでじゅうぶんだと思えた。
「もうこんな時間か。せっかくだから、歩いてみよう」
そう言われて腕時計を見ると、午後三時を指していた。
「遊園地や動物園の方はまだ混んでいそうですね」
遠くから、まだまだ元気な子供の笑い声が聞こえてくる。
「池の方に行くか」
レジャーシートをビニール袋に入れ、一成が私に手を差し出す。
その大きな手に触れようと思った瞬間。
「おっと」
一成のお尻のポケットに入っていたスマホがけたたましく鳴りだした。
目で“ごめん”と言うと、彼は後ろを向いて電話をとり話しだす。
大事な電話かな?
「……そうですか。わかりました。今から向かいます」
……え。聞き間違い?“今から向かいます”って言った……?
「悪い、姫。緊急の用事ができた」
スマホから顔を離し、本当にすまなさそうな顔でこちらを見る彼。
しかし、その表情に浮かんでいるのはそれだけじゃなかった。緊張のような、焦りのようなものを感じる。