恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
『……お前の家の近く』
「近く?」
『と言うか……家の前』
……嘘でしょ。
と思いながら、体はすぐさま窓際に駆け寄っていた。
重いカーテンをかき分け、窓を開ける。
真下に見えるうちの玄関の前に、門燈に照らされた人影が。
こちらを見上げるその人は、片手にスマホを持っている。
「どうして……」
話なら、電話でも良かったはず。なのに、どうしてうちまで来てくれたの。
そのまま声を失ってしまうと、こっちを見上げた一成が、眉を下げて笑った。暗くて良く見えなかったけど、そんな気がした。
『はは、ちょんまげだ』
「えっ」
耳元で聞こえた声に、思わず頭に手をやる。
そういえば、さっき前髪が邪魔でくくってしまったような……しかも、百均で昔買った、子供っぽいピンクのぼんぼりがついたゴムで。
思わず窓際から離れると、耳元から一成の優しい声がした。
『降りてきてくれないか』
「ちょ、ちょっと待ってください。髪の毛、直して……」
『そのままでいい』
彼の声から、笑うような響きが消えた。
『一秒でも早く、お前に会いたい』