恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
胸の奥を、ぎゅっとつかまれたような痛みを感じた。
そんなこと言われたら、待ってなんて言えない。
私は首のところが少したるんでしまったTシャツとスウェットパンツで駆け出す。
階段を踏み外しそうになりながらもなんとか耐えて、母の庭用サンダルをつっかけて玄関を開けた。
本当に出てきた私に驚いたのか、一成はスマホを耳にあてたまま、目を丸くした。
「……なによ」
後ろ手で静かに玄関を閉め、一成をにらんだ。幸い、両親は既に爆睡していたみたい。起きてくるような気配はなかった。
「いや……可愛いなと思って」
咳ばらいをする一成。
この人、絶対笑いをこらえてる。こんな格好で可愛いわけがない。
「バカにしないでください!」
あなたが“会いたい”なんて言うから、のこのこ出てきた私がバカみたいじゃない。
「私、怒っているんですよ。あんなところに置き去りにして、今までなんの連絡もよこさないで……!」
いったい私がどんな気持ちだったか、あなたには想像もつかないの?