恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
『兄貴が何かやらかしたのか』
『本人に理由は聞かないの?』
『あいつが素直に本当のことなんて話すものか』
そう言うと、理沙ははは、と少し笑った。
『たしかにねえ。あの人、何考えているのかわからないものね。真意を他人には見せないって言うか。彼の発言は信用できないよね』
綺麗にネイルがほどこされた指で、水の入ったコップをもてあそぶ。
そんな理沙の言葉に、兄との別れの理由がそのまま表れているような気がした。
『ますます信用をなくすようなことをしたか』
追及すると、理沙はふるふると首を横にふる。
『ううん。違うの。何もなかったわ』
『じゃあ、どうして』
『なにも……なかったからよ』
彼女が言葉を切った瞬間、店員が料理を運んできた。
けれど、その料理に理沙は手をつけようとはしない。
俺も、何も食べる気になれなかった。
『私たち、ずっと友達みたいな関係だったじゃない? けど彼が私と付き合いたいと言ってくれて、私も彼が好きになってしまったからOKした』
『それは知ってるよ』
俺が知らないところで二人はそういう関係になっていて、とてもショックを受けたのは、つい何か月か前のことだ。