恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
『私は、まず恋人関係が始まるんだと思ってたの。三十手前なのにって笑う? でも私は、これから彼と恋愛をするんだって楽しみにしてたのよ。それがいつの間にか、婚約の話になってしまっていた』
もちろん、理沙のことを笑おうなんていう気にはなれなかった。
『好きだったから、最終的には自分でその婚約に乗ったの。けど、そばにいて思った。この人は、私のことを本当に好きじゃなかったんだって』
『……なんだそれは』
『ひどいのよ。あの人、婚約した途端、どこにも遊びに連れていってくれなくなった。食事も一緒にしてくれない。ベッドに一緒に入る回数も激減よ』
怒った表情をして、理沙はおもむろに箸をとった。
エビチリを食べだす彼女を見て、とても気の毒になる。
あいつはいつもそうだ。
俺の欲しいものを欲しがって、無理やり奪っていっては、すぐにポイ捨てする。
理沙は俺の気持ちを知らないはずだが、兄貴は気づいていたはずだ。
腹の底から怒りが湧いてくる。