恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


彼らが婚約をしたときから、こんな風になるのではと恐れていた。

もしそうなったら、その時こそ自分の気持ちを打ち明けて、俺の方に来てもらおう。

そんな風に思っていたのに、どうしてか全くそんな気持ちは湧いてこない。

彼女のことは相変わらず大切だけど、女性として傍にいてほしいとは思わない。

ふわりと脳裏に浮かんだのは、公園の芝生でのほほんと笑う姫香の姿だった。


『いや、大事だけど、好きじゃない。好きな女性は他にいる』


自分でも驚くくらい、すっとそんな言葉が出てきた。

理沙はそれを聞いて、微笑する。


『じゃあ、あなたにできることはなにもないわ。私は誰かに本気で愛されたい。そんな人が現れるまで、気長に待つことにする』

『理沙……』

『もういいかな。残りは食べて。そして、彼女と仲良くね。友人として、たまには連絡をちょうだい』


彼女は伝票を持ち、席を立とうとする。

その腕を、俺は咄嗟につかんでいた。


『待て、送るよ。もちろん、友人として』


立ち上がると、理沙はにこりと笑った。


『ありがとう』


そうして彼女を自宅まで送り届けたあと、無性に姫香に会いたいと思った。

時刻はもう二十三時に迫っている。

急げ。彼女が眠りについてしまう前に。


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