恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「結局、俺は何もできなかった。心の底から理沙を愛していれば、彼女の傷を癒すことはできたかもしれない。けど、俺はそうは思っていない」
ちょんまげから離れた手が、私の頬を包む。
一成は私がうつむいている間にいつの間にか立ち上がっていて、私の横に立っていた。
「初対面のとき、亡くした母に似ていると思ったのは事実だけど。俺は、ひとりだと油断してちょんまげを結ってしまう白鳥姫香が好きだ」
目の中を覗き込まれて、言葉を失う。
笑っちゃいそうなセリフなのに、心臓が高鳴ってうまくいかなかった。
「安心しろ。お前に母を投影することはないし、過去はもう綺麗に消化した」
「本当?」
「ああ。ごめん、嫌な思いをさせて」
一成はこつんと、私のむき出しのおでこに自分の額を寄せる。
「……しょうがないですね」