恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
一成は急に決まった出張にぶつぶつ言いながら、その準備をしていた。
どうやら、地方にできる予定の大きな商業施設に出店の交渉に行くらしい。
他のメーカーが出店する予定だったのだが、土壇場でキャンセルになり、空ができたのだとか。
「たったの二日だ。三日後には戻ってくる。それまでよろしくな」
桑名さんはいつもと変わらない表情で、「はーい」と間延びした返事をした。
まあ、一成がいないうちは課長が部署を取り仕切るわけで、私たちはいつものように仕事をするだけだけど。
「心細いなあ……」
最初は無愛想な一成がいるだけで緊張していたけど、今では黙って見守ってくれていたのだとわかったから。
仕事が終わり、ぼそりと呟くと一成が座ったまま言った。
「大丈夫だろ。そうだ、お前に頼みたいことがある」
「なんですか?」
「二日間、親父の見舞いに行ってくれないか。洗濯をしろとか、そんなことを言うつもりはない。ただ、顔を見てきてくれればいいから」