恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


翌日は、一成がいなくてもトラブルなく一日を終えることができた。

しかし、仕事の量は変わらない。


「こんな日に限って~!」


終業間際にかかってきた電話の処理で、いつもより退社が遅れてしまった。

急いで病院に駆け込むと、まだ七時。間に合った。

相手は消化器が悪いので、下手な食べ物を差し入れるわけにもいかない。

本当に手ぶらで病室の戸をノックする。


「こんばんは~って、わあ!」


戸を開けて、びっくりした。

つい先日まで絶食状態、鼻から栄養を入れてもらっていた社長が、もぐもぐとおかゆを食べていた。


「おお、お嬢さん」

「社長、お食事できるようになったんですか!?」

「ああ。でもやはり、完食は無理そうだ」


そう言い、社長はスプーンを置いた。テーブルの上に置かれたトレイの上には、おかゆのお椀と、豆腐のおかずのカップが置かれていた。両方とも、半分ほどしか食べていない。


「でもすごいですよ。これだけ食べられただけでも、大したものです」


一緒に置かれていたお茶が入ったコップを渡すと、社長は微笑んだ。


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