恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


「お食事を召し上がられたのですか。快方に向かっておられる」


専務は私を無視し、社長に話しかける。


「まだ、しばらくはかかりそうだがね」


社長の言葉に、胸がしめつけられる。

点滴をされたままの腕が痛々しい。


「その件なのですが……きみ、ちょっと席を外してくれないかな」


どうやら、平社員には聞かせたくない話があるみたい。


「じゃあ……」


腰を浮かせると、社長が手を伸ばしてそれを制そうとする。


「せっかく来てくれたのに」


残念そうな顔をする社長。


「でも、大事なお話があるんじゃないでしょうか」


私だってもうすこしゆっくりしていてあげたいけど、専務たちが醸し出す“帰れオーラ”がすごすぎて……。


「じゃあ、私面会時間ぎりぎりまで待っています。お話が終わったら呼んでください」


反対に“まだ帰ってほしくないオーラ”を出す社長にそう言うと、彼はうなずいた。

専務たちにも会釈をして病室を出ると、戸が閉まる直前でこんな声が聞こえた。


「次期社長の話ですが……」


次期社長? 現社長がここにいるのに?

その続きが非常に気になるけど、立ち聞きは良くないよね。

静かに戸を閉めると、休憩スペースへと向かう。

夜の病棟は人が少なく、不気味なほど静かだった。


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