恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


「え……っ」


背中にあり得ない衝撃を感じ、体のバランスが崩れる。

転ぶ、と思った時にはもう、足元にあったはずの階段が目の前にあった。

ぎゅっと目を瞑る。ダダダダと連続で体中に震動が走る。脳が揺さぶられ、気が遠くなる。

震動がやんで、体が止まったのだと思った時には、全身が痛かった。

あ……なんか、天国への階段が見えるような気がする……。


「ちょっと! 大丈夫!?」


階段を駆け上がってくる足音がする。

なんとか返事をしようとするのだけど、全身が痛くてなかなか起き上がれない。


「姫香じゃない! どうしたの、転んだの?」


薄く開けた目に映るのは、とっても綺麗な……。


「てんし……?」

「何言ってるの、頭打ったの?」


何度かまばたきをすると、視界がはっきりしてきた。

そこにいたのは、知美だった。天使なんてとんでもない。ひどい悪魔だ。

ぼーっとしていると、知美ははっと上を向いた。そして、私を置き去りにしたまま駆け出していく。


< 242 / 286 >

この作品をシェア

pagetop