恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


周りを見ると、そこはどこかの家の一室のようだった。

家具は自分が寝ているベッドの他にはテレビとテーブルとソファが置いてある。どれもそれほど大きくない。

壁にかけられた時計が、十時を示していた。

黄色がかった照明が光っているのを見ると、おそらく夜の十時だろう。


「ここはどこですか? どうして、こんなことを」


車で連れ去って手足を縛っておくなんて、これじゃ本当の誘拐じゃない。

どうして私がこの人にさらわれなきゃいけないの?

そう思っているうちに、はっと気づいた。

引っ張り込まれた、あの白い乗用車。

あれ、朝に私が轢かれそこなった車だ。


「僕の言うことを素直に聞けば、すぐに縄をほどいてあげるよ」


ここはどこかを教えてくれる気はないみたい。

じっと次の言葉を待っていると、彼はソファに腰かけた。


「あんたには、僕の花嫁になるか、この世から消えるか、どちらかを選択してもらいたい」

「……はい……?」


何そのどちらも受け入れがたい二択。

そもそも、どうしてそんな二択を迫られなきゃいけないの?


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