恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
私もそうだった。彼と同じ。
悪いのは自分の暗い性格じゃなくて、隣で光り輝く知美だと思っていた。
でも、違う。
「こんなことをして社長になって、本当にあなたは喜べるの? 専務は喜んでくれるの?」
「うるさい。説教をするな」
「好きでもない相手と結婚して、幸せになれる?」
自分の人生を前向きに生きられるかどうかは、自分の気持ち次第。
ダメだと思ったら沈んでいく一方。
たまには諦めて、一休みして、それから自分が楽しんでいける道を自分で探すしかない。
だって、他人の気持ちや周囲の状況は、簡単には変えられないんだもの。
自分が変わっていくしかないじゃない。
「よくわかった。僕の提案に従う気はないということだな」
窪んだ眼窩の奥の目が光る。
その手にはいつの間にか、カッターナイフが握られていた。
まさか、そんなもので刺す気じゃないでしょうね。
危機感を感じて芋虫のように体をねじる。けれど、相手はあっという間に私のすぐ近くに立っていた。
カッターナイフが振り下ろされる。
ギュッと目を瞑る。足首に、鋭い痛みが走った。