恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


い、いいじゃないの、望むところよ。

今時貞操観念だとか、そんなの古い。

セフレだってソフレだっている時代なんだから、彼氏じゃない人と一度寝たからってなんなのよ。減るものじゃなし。

……なんて、必死で自分で自分を納得させる。

ちらと横を見ると、相変わらず前を向いたままの、日下部長の端正な顔が。

ハンドルを握る手の指は長くて、この手に触れられるのだと思うと、自然と体が熱くなる。

私、日下部長のこと、好きなのかな……。

ごめん、知美。

きっと、今夜一度きりの関係だから。だから、許してね。

色々と混乱しているけど、この場から逃げられないってことは、きっと……私、彼の腕に抱かれることを、心のどこかで望んでいると思うんだ。

シンデレラだってそう。

一夜限りの夢でもいいと言って、舞踏会に出かけたの。

私も、夢を見に行くだけ。

覚悟を決め、あたふたするのをやめた。

シートベルトをきちっと閉め、膝の上に手を置き、口を閉じる。

そうして冷静にいようと思うのに、そんな意志を裏切り、指先が小刻みに震えていた。


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