恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


よく覚えているのは、彼は最初から最後まで優しかったということ。

慣れない私を否定したり責めたりすることはなく、私も緊張はしたけど、不安になったり、嫌悪を感じたりはしなかった。

ありがとうございます、日下部長。

たった一晩でしたが、あなたに愛されているような気分を味わえました。

寝ている部長に手を合わせる。しかし、これではまるで日下部長が死んでいるようだと思い、すぐにやめた。

さて、帰ろう。

日下部長が起きたら、夢が冷めてしまう。

私は私物のメモ帳とペンで、『ありがとうございました』とだけ書き、それをお札の隣に置いて、こっそりと部屋を出た。

建物の外に出ると、そこはまだ薄暗くて寒い。

特に首元が寒くて、ぎゅっと身を縮めると、途端に泣けてきた。


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