恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
むしろ、もう日下部長の話題は聞きたくない。
あの夜のことは、綺麗な夢としてとっておきたいの。
これ以上彼に興味を持って、好きになったりしたら、きっとつらくなってしまうから。
ほとんど飲むようにして片付けたお弁当のゴミをまとめ、立ち上がる。
「もう行くの?」
「うん。たいした情報集められなくて悪かったね」
「可愛くない言い方」
「あんたに可愛げ出しても、何の得にもならないでしょ」
誰に対しても、可愛げなんて醸し出せないけどさ。
心の中で自分に突っ込みながら、さっさと歩き出す。
知美と日下部長が組んで仕事をするって言ってたっけ。
その間に親しくなって、二人がくっついたりして。
はは、お似合いすぎて泣くことすらできないや。
私だって、もう少し綺麗で、もう少し自分に自信があったなら、あの朝、ひとりで帰ったりしなかった。
『彼女にしてください』って、言えたかもしれないのに。
見上げると、咲き始めた桜がこちらに笑いかけているように見えた。
それを見て、なぜだか泣きそうになった。