恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~


絶対嫌だし。

知美が温室のバラなら、私は道端のツクシ。

知美が空に輝くお星さまなら、私はマンホールの蓋よ、蓋。

名前だって、取り替えた方が良いくらい。

どうして私が姫香(ひめか)なんてキラキラネームで、こいつが知美(ともみ)なんて平凡な名前なのよ。

とにかく、人目に触れるところで並んで一緒にいたくない……。


「今日はお弁当持ってるから」

「そう」

「それより、どうするの? 断るの?」


こうして橋渡しをした男の人と、知美が真剣に付き合ったことはないみたい。

彼女は男の人に食事をおごらせたり、物を買わせたり、たまーに寝たりしているけど、誰とも本気ではないと言っていた。

要するに、適当に遊ぶ相手はキープしておくけど、結婚を前提に真剣交際する相手は、慎重に見極めようとしているんだ。

美人は凡人と違って、婚活に焦りはない。


「さあ、どうしようかな。話してみて良い人だったらつきあうかも。でも基本的に、こういう大事な話を直接私に言ってこられないようなヘタレに、興味はないんだけどね」


知美は何の悪気もなさそうな顔で、あっさりと言ってのける。


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