恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「なぜだ」
「私、目立つの嫌いなんです。ああいうのは、目立つのが大好きな人にやらせてください。松浦さんなんて、適任じゃないですか。美人だし」
知美の名前を出すと、日下部長はため息を落とした。
「前にお前が言っていた、美人の同期っていうのは、やはり松浦のことか」
そういえば、焼肉屋から帰るときにそんなことを言ってしまったような。
「あれと比べられ続けて、卑屈になる気持ちはわからんでもない。が、そんな自分を変えようとは思わないのか」
部長は淡々と言う。私は唇を噛んだ。
私の気持ちがわからないでもない? 冗談じゃない。あんたみたいなスペックの高い男に、私のような底辺の気持ちがわかってたまるか。
「……誰が何と言おうと、今回はお前を使う。これは決定事項だ」
「どうして……」
「どうして?」
「どうしてそんなに、私に固執するんですか。あの夜のことなら、責任なんて感じないでください。忘れてほしいと、言ったじゃないですか」
近くにあった棚に、渡された化粧品を乱暴に置く。すると、バランスを崩したパックのチューブが、床にぽとりと落ちた。