恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「たしかに俺は、お前を変えてやると言った」
日下部長はチューブを拾い、手のひらでもてあそぶ。
「けれど、そんな私情ひとつで社の大事なCMモデルをお前に任せると思うか」
「あ……」
「CMはひとつ作るのに、安くても500万はかかる。しかも有名な女優やモデルを使った方が無難に決まっているのに、なぜお前を使うか。それは」
日下部長はチューブを近くの棚に置き、鋭い視線で私を射抜く。
「お前なら、いけると思ったから。新商品のイメージにぴったりだと、俺が思ったからだ」
たしかに、CMや広告には莫大なお金がかかる。
そんな重要なことに、ただの私情で素人を使うわけがない。
日下部長は、私に対する償いとか施しとか、そんな気持ちじゃなく、単に自分のCMのイメージに私が合っていたと、そう言うの?
「お互い、仕事は仕事。積極的にこなそうじゃないか」
日下部長は自分で紙袋を広げ、私が雑に扱った商品をひとつずつ入れていく。
まるで、傷つきやすい宝石を取り扱うかのような手つきで。