冷たいキミの溺愛
だって好きだもん。まっすぐに好きだもん。
押したり引いたりなんて、そんな器用なこと最初から無理があったんだ。
「…こうちゃあああああん」
がばっ!!
私は目の前の大好きな人の体に思いっきり抱きついた。
「……は?」
こうちゃんは驚いたような間の抜けた声を出す。
「好き〜、好き〜、こうちゃんが大好き。私に引くなんて無理〜~」
こうちゃんの胸の中でおうおうと言い続ける。
頭上からは「…そういうことか」というつぶやきが聞こえてきた。
てゆか…あれ?こんな抱きついているのに…うざがられてない…?
「ばか瑠璃」
いつものようにうざがられない上に、こうちゃんは一言そう言うと私の背中にぎゅっと自分の腕をまわしてくれた。
ええええええ!?なにが起こってるの!?私、こうちゃんと…抱き合ってる!?
頭が沸騰しそうなほどびっくりしてしまう。
体温がグンとあがった気がして、心臓は破裂しそうなほどバクバク鳴り出した。
そのときパッと体が離れて、こうちゃんはバツのわるそうな顔をして。
「…明日から避けんじゃねーぞ。次したら一生口きかねぇ」
最後にそう言い残して私の家を早々とあとにした。
一瞬の出来事に頭がついていかなくなる。
わ、私…今こうちゃんと抱き合ってた…んだよね!?
体にはしっかりとぬくもりと感触が残っている。
私はしばらくその場で赤面のまま突っ立っていた。