真実はメイドだけが知っている。
部屋の中は、まさに事務所といった感じだった。ただひとつ、生活感を除けば。
デスクとソファ、そしてその上には乱雑に積み上げられた書類やファイルの山。
山のとなりには、カップラーメンや空き缶、ポテトチップスの袋。
床には、靴下や衣類が散らばっている。

なんだか、悪臭がするような…

「そこに、座りたまえ」

少女が勧めるのは、座る隙間のないソファ。
僕は、迷った。これを初対面の少女に言ってもいいのだろうかと。
しかし、僕はもう耐えられなかった。



「……すみません、掃除させてください」














すっかり部屋が片付き、ようやく僕はソファに座ることができた。

「いやぁ、助かったよ。依頼人くん。
いつも片付けてくれてたメイドが来てくれなくなっちゃってたから、どうしようかと思ってたところだよ」

最初は不機嫌だった少女の機嫌も、すっかり良くなっていた。

「あぁ、そういえば名乗っていなかったね。僕はメイド探偵事務所所長、榠土るなだ」

「めいど?」

「あぁ。珍しい名字だろう?」

そう言って誇らしげに胸をはる榠土さん。
あわてて僕も名乗ろうとした。

「ぼくは、」

「篠田夕」

「え?」

「君のことは、あいつから聞いているよ。今日くるとは聞いていなかったけど」

そう言って微笑みを浮かべる榠土さんは、もはや探偵の顔だった。

「と言っても、詳しいことは聞かされていないから君の口から話を聞きたいな」

僕は、ごくりと生唾を飲んだ。
僕よりもずっと年下に見える榠土さんなのに、(中学生?)気圧されるような威圧感があった。



「…失踪した妹をさがしてほしいんです」


僕がようやく吐き出した言葉に、小さな探偵は深く頷いた。










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