嫌い、のち好き、のち愛

おじちゃんにごちそう様と言いお金を払う。


「あの、おいしかったです。ごちそうさまでした」


笑顔でお礼を言われておじちゃんも嬉しそうだ。


「またおいでね。じゃあね、大ちゃん。頑張って」


何をだ、と言いたかったけどあえて黙っていた。


ニヤニヤしてるおじちゃんに手を振って店を出て車に乗る。


「あの、お金……ほんとにいいんですか?」


シートベルトをしながら真咲ちゃんがそう聞いてくる。


やっぱり真面目だ。


「全然いいよ。むしろ俺のわがまま聞いてもらって。あれじゃ足りないくらい」


「そんなことないです。すごくおいしかったですもん。じゃあ、お言葉に甘えます。それより運転大丈夫なんですか?」


心配そうな顔で覗きこまれて、少しくすぐったい気持ちになる。


こんな風に心配してくれる子、今までいなかったな。


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