嫌い、のち好き、のち愛
「すごい、殺風景な部屋ですね」
「そうかな?」
1LDKで、まあ言われてみれば必要最小限のものしか置いてないかな。
「俺、あんまり物欲ないんだよね。あ、誓約書書いとく?」
そう言うと真咲ちゃんは少し考えてから頷いた。
「そうですね。早く眠ってほしいところですが、間違いがあっては困るのでいただいておきます」
そう言われてつい苦笑してしまうが、俺は紙にボールペンで文字を書く。
「村上さん、左利きなんですね」
字を書いている俺を見て真咲ちゃんはそう言うが……。
「なんですか、これは」
書き上がった誓約書を見て顔をしかめる。
『私、村上大智は同意がない限り雨沢真咲さんには手を出さないことを、ここに誓います』
「同意はってなんですか?」
「いや、一応、ふわぁっ、ね」
そう言いつつ欠伸をする俺を見て真咲ちゃんがはっとした。