Transformation-異形-
か弱き化け物
「大丈夫か」

少佐を倒し、着地と同時に片膝をついた十文字に、本城が手を貸す。

「流石…『はじまりの男』は強ぇな…だけど俺だって、機関の幹部4人をぶっ殺してやったぜ…戦士としては合格点だろ」

ゆっくりと立ち上がろうとする十文字。

しかし。

「痩せ我慢しなくていいよ」

そんな十文字を、フワリと抱き締めるのは向日葵だった。

「…俺は痩せ我慢なんて…」

「言わないで」

無機質な昆虫のような顔。

その顔を見つめて、向日葵は微笑む。

「体は強い変身ヒーロー、でも心は弱い人間のまま…そんな状態で、我慢して戦ったんだよね。よく頑張ったよね。きっと真琴ちんも誉めてくれるよ、十文字君の事」

「……」

涙さえ零れる事のない複眼、表情の浮かばない顔。

だが十文字の俯く姿は、まるで咽び泣いているようにも見えた。

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