Transformation-異形-
だが。

「俺に関わるな!」

男は声をかけ、肩に触れた向日葵の手を跳ね除ける。

驚く向日葵。

男の態度は、向日葵の気遣いを煩わしく思うのとは些か違うようだった。

どちらかといえば、『何かに巻き込まれる事を恐れている』表情。

「ど、どしたのお兄さん?」

その異常なまでの警戒する態度に、向日葵が目を丸くしていると。

「くっ!」

男は何かに気付いたように、ビルの壁面を見上げた。

向日葵も振り向いてみる。

…何もいない。

いや。

「!?」

今、ビルの壁から壁へ、何か飛び移ったような気がしたが…。

目の錯覚かと何度も瞬きする向日葵を他所に。

「くそっ、ここはまずいか!」

怯えるように、逃げるように。

男は向日葵を置いて走り出す。

「あ、お兄さんっ!」

向日葵の呼び掛けにも応じない。

…間もなく、夜が訪れようとしていた…。

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