殺人事件と雪ウサギ
色のない世界
 見下ろす地面も見上げる枝も、全て真っ白な雪に覆われて、木の幹がやけに黒々して見える。

 空の他に色のない世界で、夏憐の青いサマードレスがやけに輝く。

「ここで車に撥ねられて、あたしはここまで飛ばされて、犯人の車はここに停まったの。
 で、あたしがここまで這いずって逃げたところで、犯人があたしに馬乗りになって首を絞めたの」

 夏憐は手のない右手首で車の位置を示したまま、自分が倒れた場所を左手で指差した。

「凍ってなければ滝の音はここまで聞こえるのよ。
 犯人はあたしの遺体を滝壷へ投げ込んだんだけど、遺体は下流のカーブになってるとこで岸に打ち上げられて、後は野犬のなすがままキュウリがパパ。
 ここと滝と下流の岸と、どこで待つのが一番いいのかちょっと悩んで、滝が一番綺麗だから滝にしたの」
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