殺人事件と雪ウサギ
 熊も人も居ないってわかって、僕は雪ウサギを床に下ろして、藁をめくって中を覗いた。

 たくさんの藁の下に包まれた氷は、テレビで見た氷室のよりもずっと小さいし少なかった。

「これ、一年前の氷だわ」

 夏憐が悲しそうに首を振った。

「この氷室を管理してるの、あたしのおじいちゃんなんだけどね……あたしが死んでからほったらかしにしちゃってるみたいね……」

「………」

 僕は藁をもとに戻そうとして、藁の中に紛れていた何かを掴んで……
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