殺人事件と雪ウサギ
「ひゃっ!?」

 悲鳴を上げてそれを放り投げた。

 それは夏憐の右手首だった。

 切られてから半年経っているはずなのに、骨にもミイラにもなっていなくて、切られたばかりみたいに見えた。

 氷室で冷やされて保存されていたからだ。

 きっと犯人もこの雪ウサギみたいに足を滑らせてここに落ちて、でもここが氷室だって事には気づかずに、さっきの雪ウサギみたいに熊が居ると思い込んで、餌になりそうな夏憐の手首をオトリのつもりで投げ捨てて逃げ出したんだ。
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