つるの恩返し
「あなたの名はなんというのですか?」

「わ、私の名は…」


私の名…?

名前…名前…。


「もしかして…名前を覚えてない?」

「…はい」


覚えないのではなく、無いのだけれど…。


「じゃあ、さゆきという名はどうでしょう?」

「さ、ゆき…」

「あ、私がつけても良かったかい?」

「嬉しい…です」

私の名はさゆき…。

「あなた様の名は?」

「きょうや、というんだ。京の都の京に夜と書くんだよ」

「ごめんなさい。私、字を書けなくて…」

「そうなのか…では、その脚が治るまで、字を教えてやろう。でも、今日は寝ようか。客用の布団はないから、とりあえずあなたは私の布団で寝ておくれ」

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