窓ぎわの晴太くん
晴太は指を折り曲げ握りこぶしを作っていた。
手の平に爪が食い込んでしまうほど・・・
愛してるのか?と聞かれれば俺は確実に里子を愛している。
でも今の俺は、本当に里子の事を愛しているのなら里子の事を手離さなきゃならない。
この自分が始めた一連の仕事がある限り自分に弱みを作る事は許されない。
晴太は里子を抱き寄せる事も、頬の涙をぬぐう事も必死に我慢した。
里子を危険な目に合わすわけにはいかないんだ・・・
晴太はずっと黙っていた。
昼休みの時間はどんどん過ぎていく。
「晴太さん・・・
分かりました・・・
私、晴太さんの彼女になりたいっていう夢はもう諦めます。
でも、好きな気持ちはそのままにしておいていいですか?
好きな気持ちは努力ではどうにもなりません・・・
晴太さんを好きな気持ちは大切にとっておきたいんです」
里子は自分のお弁当をまだ胸に抱いたままだった。
もう涙も枯れてしまったのか一滴も出てこない。
「晴太さん、一つだけお願いがあるんです」
晴太はやっと里子の目を見る事ができた。
この何日かの出来事で里子のまつ毛のエクステはほとんど取れてしまっている。
「お弁当は作り続けていいですか?
晴太さんの食べる姿が大好きなんです」