窓ぎわの晴太くん
晴太は頭を抱えていた。
さっきお手洗いのために席を立ち廊下を出たところで、後を追いかけてきた里子に呼び止められた。
「は、晴太さん、あの・・・
今夜、もし時間があれば私の家にご飯を食べに来て下さい。
来れればでいいですので・・・」
そう言うと里子はあっという間にいなくなった。
晴太は今夜も相沢と会う予定になっていた。
金井のばあさんがまだ東京に留まっている間は動向を見張らないとならない。
昨夜、宿泊しているホテルは見つける事ができたけれど、何のために東京へ出てきているのかはまだ謎だった。
資産家で千葉の田舎に一人で住んでいるそのばあさんはいつでも誰かに狙われている。
とにかく先を越されないように静かに且つ迅速にそのばあさんの足跡をたどるしかなかった。
そして、この非常事態に派遣の仕事を休まない晴太に相棒の相沢は腹を立てていた。
でも昨夜の事を思えば、今日は里子の家に立ち寄ってあげたいと心は叫んでいる。
一時間ほど抜け出すしかないな・・・
作ってくれている夕飯を食べてすぐに出てこよう。
マジで今の俺は、初めて恋を知って浮かれている中学生と同じレベルだ・・・
これから先、お前はどうしたいんだ?
しっかり考えろ、晴太。