窓ぎわの晴太くん
里子は猛ダッシュで家へ帰り、早速夕飯の準備に取り掛かった。
今日の夕飯のメニューは肉じゃがと決めている。
お味噌汁には旬の春キャベツを入れよう。
きっと晴太の普段の食生活はバランスが悪いに違いない。
今夜は和食中心で肉じゃがの他に豆腐のハンバーグも作ることにした。
里子は一人暮らしを始めてから、家へ帰り着くと必ず見もしないのにテレビをつける癖があった。
それは寂しさを紛らわすための一つの方法だった。
テレビから聞こえてくる誰かの声が、そこに家族がいるような感覚にしてくれる。
でも今の里子は家に誰かが来てくれるという癒しを知ってしまった。
里子の手料理を食べに里子の家に来てくれる。
それが里子にとっての最高のプレゼントだった。
“ピンポン”
里子の部屋の半分壊れかけているチャイムが必死に音を立てて来客の存在を教えてくれた。
「晴太さん、早かったんですね」
里子は着けていたエプロンを慌てて取った。
「このチャイム壊れてる?
3回鳴らしてやっと音が鳴ったけど」
里子は声を上げて笑った。
「3回ならまだいい方です。
この間は宅急便の方が10回鳴らしたって言ってましたから」