窓ぎわの晴太くん



里子は、ニット帽を目深にかぶり丸い黒縁のだてメガネをして電車に揺られていた。
自分の姿が電車の窓に映ると、なんだかこのアンバランスな恰好が恥ずかしくなった。

これじゃ逆に目立ってしまう・・・
ニット帽はやめよう。
このメガネだけでもきっと晴太さんは私って気づかないはずだもの。

隣に立っている人達が里子を見て笑っていることに、里子は全く気づいていなかった。
必死にニット帽を被ってはぬぎ、メガネを外してはつけ、その行動を繰り返していたから。

そして、結局、里子はやっぱりニット帽をかぶりメガネをつけた格好で落ち着いた。

これなら絶対、晴太さんは私に気づかない。



東京駅に着いた里子は涼にメールを送った。


“東京駅に着きました。今、どこですか?”


東京駅はいつ来ても人が多い。
そして、広くて大きいためここで人を捜し出すというのは至難の業だ。

里子はとりあえず地下から地上へ上がり人の波にのまれながら、涼からの連絡を待っていた。


“里子ちゃん、ごめん。
晴太の降りた駅は東京駅じゃなかった”


“どこですか?”


すると、涼から携帯の方に電話が入った。









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