窓ぎわの晴太くん
「え~、そんなダメですよ。
まだどこかにいるかもしれないじゃないですか・・・」
里子は涼越しに遠くを見ようと必死に背伸びをしている。
「いいよ・・・
もう、今日は疲れたし、早く帰ろう」
「え、でも・・・」
涼は里子の肩を抱き寄せた。
「もし晴太が俺達が尾行したって知ったらきっと落ち込むだろ?
里子ちゃんの事も嫌いになるかもしれないし」
里子は黙っていた。
でも、顔を上げた里子はもう一度後ろを振り向こうとする。
「里子ちゃん・・・」
「私、本当は晴太さんの秘密を知りたいんです。
どんな秘密があっても私の気持ちが変わることはないし、その秘密を一緒に分かち合いたいんです」
「どんな秘密でも?」
涼がそう聞くと、その拍子に里子は涼の背後に回り晴太がいるはずの方向を見ていた。
「あ・・・」
「え?」
涼と里子は言葉をなくした。
遠くに見える晴太は、そのいかつい仲間の男と一緒にか弱そうなおばあさんを囲んでいた。
白髪のちゃんとした身なりをしたおばあさんは恐怖で顔が歪んでいる。
晴太さん?
そのおばあさんに何を言ってるの?
何を困らせてるの?
里子は驚きと恐怖で胸の鼓動が止まらなかった。