窓ぎわの晴太くん
涼も頷いた。
「・・・うん。
俺もそう思う・・・
俺だって晴太の口からちゃんとした言葉で聞きたいよ。
でも、今の晴太は里子ちゃんになら真実を話してくれるかもしれない。
その真実が最悪なものだったとしても」
里子も静かに頷いた。
今、多発しているお年寄りをターゲットにした詐欺行為のニュースは、里子も何度もテレビや新聞で見ている。
でも、涼も里子もその事には何も触れなかった。
その事を口に出すだけで恐ろしかったから。
自分達の知っている晴太はそういう人間じゃない。
涼も里子も砕かれてしまった晴太の人物像を必死にかき集めていた。
「じゃ、里子ちゃん・・・
一人で大丈夫かな?」
涼は里子の家の前まで一緒に歩いて来た。
こういう時に一人暮らしほど辛いものはない。
「ありがと・・・
大丈夫だよ・・・」
涼はそうだという顔をしてスマホを取り出した。
「里子ちゃん、LINE交換しよ」
二人は久しぶりに笑顔を見せてお互いのスマホを振り振りした。
「じゃあね・・・
また、すぐに連絡するよ」
里子は涼の気遣いが嬉しくて涼が見えなくなるまで見送った。
そして、自分の部屋に入った途端、LINEの通知音が鳴った。
“俺はいつでも里子ちゃんのそばにいるから
その事は忘れないで
涼より”