窓ぎわの晴太くん
一人になった里子はキッチンのシンクに溜まったお茶碗を洗い始めた。
ほんの何時間前に、晴太はこの場所で私の手料理を美味しそうに食べてくれた。
あの時の晴太さんの笑顔に、絶対嘘偽りはない。
でも、なんでだろう・・・
頭の隅にあの光景がこびりついて、私の大好きな晴太さんの笑顔を闇の中に追いやってしまう。
晴太さん・・・
声が聞きたい・・・
晴太さんの優しい声で今夜の出来事は嘘だと言ってほしい・・・
里子は晴太が使ったご飯茶碗をずっと見ていた。
私は自分のこの気持ちを信じる。
こんなに好きになる人はもう現れないかもしれないから。
私は晴太を信じる。
ううん、晴太が何か罪を犯していてもそれでも晴太を見捨てない。
私はそう決めたもの。
そして、もう引き返せない。
こんなに晴太を愛してしまったから・・・
里子は冷蔵庫からたくさんの食材を取り出した。
こんな落ち込んだ気分の時は料理をして紛らわすしかない。
明日の晴太へのお弁当は心が穏やかになるおかずにしよう。
穏やかになるおかず??
甘い卵焼きに、イライラ解消の鉄分たっぷりのひじきの煮物。
あ、忘れてた・・
晴太さんの大好物の鳥の唐揚げも入れなくちゃ・・・