窓ぎわの晴太くん
「ののちゃん、今日の午後に派遣会社の田中さんがここに来ることになってるから。
もし、僕がいない時はちょっと待っててもらって」
里子は、今日、急に田中が来る理由が分からなかった。
「田中さんは何か急用ですか?」
広瀬は書類を見ながらとても残念そうな顔をしてこう言った。
「東君がね、彼の契約は元々異色でね、3か月経った時点でそれ以降は一か月更新だったんだ。
彼のパソコンのスキルは最強だったからね。
僕としてはできれば長くいてもらいたかったんだけど」
「え?」
「今月いっぱいで辞めるそうだ」
里子は足の震えが止まらなかった。
「今月ってあと少しじゃないですか・・・」
「うん、なんか急に忙しくなったみたいで後の残りの出勤日も有休を使って何回か休むそうなんだ」
里子は口に手を当てて泣くのを必死に堪えていた。
「ののちゃんも彼とは仲が良かったみたいだし。
できれば送別会でもと思ってるんだけど」
広瀬は里子が晴太に想いを寄せている事は随分前に分かっていた。
だから、この件についても中々里子に言い出せずにいた。
「ののちゃん、僕はちょっと庶務の方に行ってくるね」
広瀬は里子の涙は見たくなかった。
こんなウブな女の子が傷つく姿は見てる方も胸が切なくなるから。