窓ぎわの晴太くん
晴太は明日には東京を離れなければならなかった。
いつもなら長くても3か月できっぱりと仕事は辞めてきた。
派遣にこだわっているわけではなくその時その時で条件に合った仕事をただ選んできた。
この仕事は晴太にとってはカムフラージュのための戦術の一つだ。
それだけ、晴太はいつも誰かに追われている。
晴太のしている事を邪魔したいと思う人間が多すぎた。
里子に何をどうやって説明すればいいのか・・・
真実を話す事が優しさだとは限らない・・・
晴太は歯を食いしばって里子を自分の元から引き離した。
どんなに泣かれようと別れを告げなければならないんだ。
「いつかはきっと僕なんかとつき合わなくて良かったって思える時が必ず来る。
ごめん・・・
今はこんな事しか言えないんだ」
里子はまた晴太の首に抱きついた。
「じゃ、私の気持ちを聞いてください。
私は晴太さんがどんなに悪い男の人でも嫌いになりません・・・
何があってもついて行きたいと思ってます」
「ののちゃん・・・」
晴太のズボンのポケットの中で携帯がブルブル鳴っている。
でも、里子にはそんな事はどうでもよかった。
「私、知ってるんです・・・
晴太さん達が、年老いたおばあさんをつけ回してる事を・・・」