窓ぎわの晴太くん



晴太は電車を待ちながら動揺を隠し切れずにいた。

里子は一体何を見たのだろう?
何かを見たか聞いたりしなければあんな具体的な事を言えるはずはない。
それに駆け引きで言葉を操るようなそんなタイプの子でも絶対ない。

晴太はここ2日ほどの自分の行動を思い起こしていた。
どっちにしてももう里子を騙すことはできないだろう。

それが晴太の日常であり真実なのだから。




「お前、どこに行ってたんだ?」


相沢は最近の晴太の行動に堪忍袋の緒が切れていた。
急にいなくなるわ、電話にも出やしない。

相沢は品川のホテルのロビーに置いているソファに座り、晴太を睨みつけた。


「すみません・・・

それより金井のばあさんは?」



「ホテルの部屋でくつろいでるはずだ。

それよりお前、坂龍の奴らを見なかったか?
あいつらも動き始めたらしい。
でも、こっちが先に手を打ってるって事にはまだ気づいてないようだがな」


晴太はヤバいと思った。
実はその坂龍の奴らに品川駅を出た所で出くわしてしまっていたから。


「実はさっき駅の所で・・・」



「会ったのか?
ってか、ばれてなければいいんだよ」



「しっかり顔を見合わせました」



「尾行は?
されてないだろうな?」



「かなり巻いて歩いてきたから大丈夫だと・・」


相沢は席を立ち晴太を隅に呼んだ。


「あいつらにとって俺らは最大の敵なんだ。
分かってるか?

特にお前は派手にあいつらの仕事をほとんどひっくり返してきただろう?

もう一度言う。
二度と忘れるな。

気を抜くなよ。 


殺されるぞ」


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