窓ぎわの晴太くん
晴太はずっと裏道を歩いた。
ここら辺になると飲み屋もずいぶん少なくなる。
静まり返ったオフィスビルの間を抜けながらすばやく移動した。
晴太は誰かがつけてきているとは全く気づいていなかった。
人通りが少ないわけでもなく残業したサラリーマンがちらほら歩いている。
気を抜いていたわけではない。
奴らの方が一枚上手だった。
晴太は気がつけば二人組に挟まれていた。
晴太が察知できなかった理由の一つに、晴太の先を歩いていた坂龍の人間が新人だったということ。
人を見て覚えることは晴太の特技でもあった。
坂龍の奴らもほとんど頭に入っている。
でも、この男は知らなかった・・・
人波が途切れた時、背後の男が晴太に声をかけた。
「晴太さんよ~、そんなに急いでどこに行くんだい?」
晴太はもう諦めた。
里子を守るためにもこいつらと対峙しなければならない。
気の済むようにさせてこの場所から退散させなければならない。
そうじゃなきゃ里子の元へ俺は行けない。
里子の存在と里子の居場所をこいつらに教えるわけにはいかないんだ、絶対に・・・
「なんか俺に用っすか??」
晴太がそう言って振り向くと、坂龍の奴らは不気味な笑みを浮かべそこに立っていた。