窓ぎわの晴太くん
里子は落ち込んだ顔をしてオペレーター室に続く廊下を歩いていた。
「ののちゃん」
後ろから聞き覚えのある声がする。
里子が振り向くと、自販機の前に缶コーヒーを持った晴太が立っていた。
晴太は目を細めて、里子の表情をさりげなくうかがっている。
晴太の顔はいつも笑っているように見える。
細めた目は目じりを下げ笑っているような心配しているような不思議な顔をして里子を見ていた。
「ののちゃん、今朝はなんだか元気がないね。
何かあった?」
「い、いや、何もないです・・・
あ、晴太さん・・・
その、エクステは・・・」
「うん、今日の6時半に予約を入れたけど大丈夫だった?
駅前のビルだからここからも近いと思って。
ちょっと早かったかな?」
里子は胸の奥から涙がじわ~とこみ上げてきた。
晴太がこの約束を覚えていてくれたことがただ嬉しくて・・・
「大丈夫です。
晴太さん、ありがとう」
晴太は棒立ちになって涙を堪えている里子の頭をポンポンと優しく叩いた。
「じゃ、この先のコンビニで6時に待ってる。
ちょっとくらい遅れてもいいから、慌てないでゆっくりおいで」