窓ぎわの晴太くん
二人の苦悩
「晴太さん・・・
どうしたんですか?・・・」
晴太はドアに半分寄りかかり膝を抱えて座っていた。
里子の方を見てホッとした顔で立ち上がろうとする。
里子は晴太の両腕を支えおそるおそる体を抱え込み必死にドアからソファまで運んだ。
「ののちゃん、遅くなってごめん・・・」
里子は涙を堪えながら首を横に振った。
一瞬でも晴太は来ないと思った自分が情けなくて悔しくてしょうがなかった。
何があったのかは分からないけれど、でも、こんなケガをして息も絶え絶えでとても苦しかったはずなのにそれでも私に会いに戻って来てくれた。
それなのに、私は・・・
里子は悔し涙を喉の奥で飲み込んで気丈にふるまった。
今は泣いている場合じゃない・・・
洗面器に冷たい水を張り柔らかいガーゼを浸し晴太の前まで運んだ。
「晴太さん・・・
ちょっと痛いかもしれないけど我慢してください・・・」
里子は晴太の隣に座り、ガーゼで優しく口元の傷の血を拭きとった。
腕にもたくさんの擦り傷がある。
そして、わき腹あたりは洋服にまで血のシミができていた。
里子は目を背ける事もせず、晴太の傷を一つ一つ丁寧に消毒していく。
「痛・・・」
晴太は我慢しきれずに声を上げてしまった。