窓ぎわの晴太くん
晴太は口を大きく開けようとすると、口の中に激痛が走る。
「ゆっくりでいいですから・・・」
里子はそう言いながら、スマホの懐中電灯機能をオンにして晴太の動きを見守っている。
晴太の口が半分くらい開いた時、里子はすばやくライトをあてて口の中を覗いて見た。
「ひどい・・・」
口に中は切り傷でいっぱいだった。
傷口が変色し真っ赤に盛り上がり、まだ血が出ている個所もある。
「誰がこんなことを・・・」
里子は怒りで今度は涙が溢れてきた。
ひどすぎる・・・
「ののちゃん・・・
これが僕の今で、今の僕の現実なんだ・・・」
「誰が?
誰にやられたんですか?」
晴太は口の痛みのせいにして何も言わなかった。
里子は怒ったように立ち上がり台所に歩いて行く。
晴太はソファにもたれそんな里子を目で追った。
これでよかったのかもしれない・・・
こんな目に遭う男と知ったらさすがの里子も愛想をつかすだろう・・・
晴太は静かに目を閉じた。
「晴太さん・・・」
優しく呼びかける里子の声がした。
「これ飲めますか?」
そこには細いストローと氷がたくさん入った黄色の透明な飲み物が置いてあった。