窓ぎわの晴太くん
晴太は躊躇していた。
晴太は自分の口の中の状態は自分が一番よく分かっている。
唾を飲み込むだけで痛いのに今は何も飲みたくない・・・
「ミネラルウオーターにたっぷりのはちみつを溶かしただけです。
沁みないと思うんです。
それに傷口にはちみつはとってもいいと思うのでちょっとだけ飲んでみないですか?」
晴太は里子の言う事はなんでも聞いてしまう。
さっきまで飲みたくないと思っていたのに今はもうストローをくわえている始末だ。
なんで里子の前だとこうなってしまうのだろう?
晴太は里子の言うようにちょっとだけ飲んでみる。
うん?
痛くない・・・
そしてもう一度、今度は多めに飲んでみると傷口をまろやかな液体が潤していくのが分かった。
「痛くないし、美味しい・・・」
里子はリラックスした表情を浮かべている晴太を見て一息ついた。
全部飲み干した晴太は心から落ち着いて見える。
そして、里子は、また晴太の隣に座った。
里子の大好きな晴太の指を自分の指に絡めながら、晴太の横顔をずっと見ている。
「晴太さん・・・
私に理由を聞かせて下さい・・・
晴太さんがこんな生活をするようになったわけを。
普通の生活を捨てなきゃならなかったわけを・・・」