窓ぎわの晴太くん
「え? 私にですか?」
晴太はなんで今まで気がつかなかったのか不思議に思うほど、祖母と里子はよく似ていた。
「うん、例えば・・・」
「例えば?」
里子はなんだかすごく嬉しかった。
晴太さんが大切に思っているおばあさんに私が似てるなんて・・・
「例えば、祖母はお人好しで人を疑う事を知らない。
特に僕の事になると一生懸命になり過ぎて失敗も人一倍多い。
周りの人から言わせれば、ド天然でおっちょこちょい」
里子は少しむくれていた。
「私はド天然でもおっちょこちょいでもありません」
晴太は久しぶりに笑った。
でも笑うと口元の傷の痛みが全身に広がる。
「そういうとこも似てる。
僕のばあさんも同じ事を言ってた」
里子は晴太を睨み、でもすぐに笑顔を見せた。
「晴太さんの話を聞いてて、私もおばあさんに似てるとこがあるなって思いました」
「どこ?」
「誰よりも晴太さんを愛してるところ・・・」
葬り去ったはずの涙が再び晴太の体の中で動き出した。
でもこみあげてくるかたまりを晴太は胸の奥に強く押し込んだ。
お前に泣く資格はないんだ・・・
「私、その私に似ている晴太さんのおばあさんに会ってみたい・・・」
晴太は里子の絡めている指をそっと外した。
「もう死んでいないよ」
「え? ごめんなさい・・・
そうなんですか・・・」
里子はうつむいてしまった。
「僕が殺したんだ・・・」