窓ぎわの晴太くん



里子は一瞬心臓が止まったかと思った。
それほど晴太のその言葉には、痛恨と後悔の念そしていきり立つ怒りが溢れていた。

それでも里子は冷静だった。


晴太さんがおばあさんを殺す?
そんな事地球がひっくり返ってもあるわけがない。


「そんなありもしない事を言わないで下さい。

晴太さんはそんな人間じゃない。
なんでそんな事を言うんですか?・・・」


里子はまたしつこく晴太の指を自分の指に絡めた。
晴太の心の闇は深く簡単に取り除くことなんてできない。
でも、それでも、何かをしてあげたい・・・
微力な支えでもいい、晴太の苦しみを取り除いてあげたい・・・


「僕が殺したんだ・・・


祖母をいつの日か僕は見捨てていた。
大学を卒業して就職が決まって一人暮らしを始めた僕は全く実家に帰らなくなった」



「そんなのよくあることです。
晴太さんに限ってじゃない」


晴太は静かに横に首を振った。


「働き出して一年くらい経った時、僕は同じ職場の年上の女性とつき合い始めた。

僕より4つも年上のその人にまだガキだった僕はかなりのぼせ上がって、その人の家に転がり込んで同棲を始めたんだ」








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