窓ぎわの晴太くん
里子は話が核心に近づくにつれ、只ならぬ不安が襲ってきた。
晴太の闇に居つく悪魔の姿を見たような気がしたから。
「祖母は僕のためなら死ねるような人だった。
でも、僕のためにと僕に渡したはずの全財産は悪い奴らに渡ってしまった・・・
僕は何も知らなかった・・・
祖母が倒れたという一報がきて僕は初めてその事実を知ったんだ。
元々、高血圧で心臓が悪かった祖母はショックのあまり体調を崩していた。
でも、晴太には黙っててと母達には釘をさしてたみたいで・・・
僕が祖母の家に帰った三日後に祖母は息を引き取った・・・」
里子は強く晴太の手を握り返した。
何て言葉をかけていいのか分からない・・・
「母に初めて頬を引っ叩かれたよ。
祖母はお金をだまし取られる前に僕に電話をしてたんだ。
でも、その頃の僕はたまたま携帯を変えていて、面倒くさがって親にも祖母にもまだ番号を教えてなかった。
最悪だろ?
あの時、僕の番号を知ってさえいればお金を取られる事もなかったし祖母が死ぬ事もなかったんだ。
僕は僕の写真で囲まれた祖母の部屋で死にそうなほど落ち込んだ。
僕のせいでっていう思いは僕の魂まで食いつぶした。
僕が殺したんだ・・・
それに間違いはない・・・」