窓ぎわの晴太くん
「でも、晴太さん・・・
そんなこと、晴太さん一人で防げるわけじゃない。
あの手の詐欺は全国各地で起こってるんだから。
いつかどこかでやめなきゃ・・・
おばあさんのためにももうやめてください・・・
晴太さんのためにも・・・」
晴太は涙でグシャグシャになった顔で晴太の事を心配してくれている里子をぼんやり見ていた。
俺がこんなにも里子に惹かれた理由はきっとここにある。
俺の大好きだったばあちゃんに似ているのはもちろんのこと、俺を救い出してくれる予感があったから。
俺はきっと心のどこかでこの呪縛から逃れたがっている。
でも、やっぱりそれは今じゃない。
まだ、何かが足りないんだ・・・
俺の心の中で整理がつくには何かが足りない。
まだばあちゃんに顔向けできない、俺のせいで死んでしまったばあちゃんに・・・
もう外は朝日が滲んでいた。
結局、二人とも一睡もしていない。
「ののちゃん、今日はありがとう。
もう、僕は帰らなきゃ・・・
僕が今している事はもう少し続けるつもりだよ。
だからののちゃんとも今日を最後にする」
「いや」
里子は晴太の頬に泣きながらキスをした。
「勝手に決めないで下さい・・・
こんなに好きなのに・・・
なんで別れなきゃならないんですか・・・」
晴太は片手で里子を抱き寄せた。
痛む口元で里子にキスをしようとすると里子が晴太の傷にゆっくりとキスをした。
「私、どんな晴太さんでも愛せます。
だから、私を捨てないでください・・・・」