窓ぎわの晴太くん
二人の道標
“捨てないで・・・”
その言葉は晴太の心に深く突き刺さった。
里子を抱きしめる腕に力がこもる。
あの日・・・
ばあちゃんが息を引きとった日、俺は母親にこう言われた。
「どうしておばあちゃんを見捨てたの・・・
あなたをどれだけ心配してたか分かってたでしょう・・・
私達はどうでもいいから、おばあちゃんには優しくしてほしかった。
顔を見せて、電話で声を聞かせることがどうしてできなかったの?・・・」
ばあちゃんを俺は見捨てたんだ・・・
悔やんでも悔やみきれない・・・
持病があって体がきつくても休まずに近所の保育園の給食のおばちゃんを続けてきた。
少しでもお金を貯めて俺にお小遣いをくれることを生きがいにしてたから。
就職が決まった俺に地元のデパートでスーツを作ってくれたのもばあちゃんだった。
俺のためにこつこつとお金を貯めてきた・・・
それを全部・・・
俺が見捨てなければばあちゃんは生きてたのに・・・
晴太は大きく息を吸った。
自分の罪をまだ許せる気にはなれない。
「ののちゃん、ごめん・・・
僕は自分がこんな状態で悔やんでいる限り誰の事も幸せにできない。
ののちゃんの事は説明ができないほど愛おしく思ってる。
離したくないし、俺のものだけにしたいって心から思ってる。
でも、見捨てるわけじゃないんだ・・・
ののちゃんを守るために僕達は別れるんだ・・・」